建設会社子会社化 ~構内重機の転用も~
総合リサイクルのこっこー(本社=広島県呉市、槙岡達也社長)は、土木工事分野に参入する。9月末に建設業の村上工務店(広島市)を買収し子会社化。土木関連工事の技術やノウハウを取り込むとともに、既存事業とのシナジーを高め、グループ会社で土木事業の拡大を目指す。製鉄所の構内作業で使う大型吸引車や重機を、構外工事に転用するなど、新事業の開拓にも注力。日本製鉄瀬戸内製鉄所呉地区での上工程休止まで1年を切る中、構内で働く社員の雇用を守るため、収益確保と事業基盤の再構築を加速する。
「呉での雇用確保へ道筋」
これまで金属建材などを扱う生活環境事業部でエクステリア工事を手掛けていたが、本格的な土木分野は手付かずの領域だった。広島県では、豪雨災害からの復旧や防災関連など公共工事には、人手不足などの影響で、まだ整備が完了していない地区も多く、堅調な出件が続いていることから村上工務店を子会社化することで土木分野へと進出。のり面工事や防災工事での強みを生かしつつ、人員を補強することで業績向上に道筋をつける。
日鉄呉地区の構内作業を担当する製鉄事業部所属の社員は約120人。2021年9月に予定される上工程休止で、余剰となる人員、設備などが未だ明らかでない中、社内での部署異動だけでは減少分を吸収しきれないとみて、槙岡社長直轄の「事業開発プロジェクトチーム」を中心に、新規事業の開拓に取り組む。
構内作業では、重機を扱うなど土木工事と似た仕事も多く、社員の培ってきた技術が強みとなる。慢性的な人手不足に悩まされている建設業界への参入は、仕事の確保にうってつけだ。同時に、製鉄所内の作業用に保有する重機を構外工事で活用する道も拓ける。
すでに一部の車両は、構外事業での運用を始めている。製鉄ダストやピットにたまった汚泥を回収する大型の協力吸引車を、鋳造メーカーの工場や汚泥回収などに派遣。今年4月以降、5件ほどの実績があった。構外でも大型吸引車を使った作業には一定のニーズがあるとみて、今後も受注拡大に注力する。
土木工事のスタートに加え、外注作業の内製化などで「上工程休止までは雇用確保のための業務の方向性についてめどが立った」(槙岡社長)ものの、その先には23年9月までの呉地区の全面閉鎖が控えている。このほど、こっこー社内で実施したアンケートでは、製鉄事業部のほぼ全ての社員が「呉で、働き続けたい」と回答したといい、地元での雇用維持を目指し、さらなる企業買収、事業譲受も視野に、業容拡大を模索していく方針だ。
日本製鉄からは、呉地区の閉鎖について、大枠のみが示され、具体的な計画は明らかにされていないという。槙岡社長は、「いまの不透明な状況では、当社が閉鎖への対応スケジュールを詰めていくのは難しい」と苦境を説明する一方、「これまで呉の製鉄所と共に歩んできた。その歴史を重んじ一日でも長く、一人でも多く、構内で働けることが社員にとってはベスト。閉鎖まで、そして閉鎖後もこの地域に根差した事業展開を目指し、協力していきたい」と話す。
[2020.12.14] 産業新聞 掲載