総合リサイクル・建材加工販売のこっこー(本社=広島県呉市、槙岡達也社長)は、新規事業開拓を加速させている。10月には不動産事業に参入した。こっこーグループのシナジーを発揮し、不動産の売買・仲介から建屋の解体、スクラップの処理、土地の造成工事、新築時の建材加工販売・施工まで一貫したプロセスを構築し、企業の付加価値向上などを狙う。槙岡社長に事業を開始した狙いや今後の展望などを聞いた。
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――不動産事業に参入した経緯と狙いを。
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「社内からの声があり、不動産を扱うことができればこっこーが持つリソースをフルに生かせると、話が進んだ。当社は鉄・非鉄、産業廃棄物の中間処理や建物解体を手掛ける『環境資源事業部』、各種鋼材や屋根壁材、エクステリア商品販売・施工の『生活環境事業部』の2事業部を置く。グループで土木工事業の村上工務店(広島市)は土地の造成も手掛ける。最近は空き家問題が社会課題となっていることもあり、不動産の仲介・売買が可能になれば、解体から建築まで当社が相談相手となれる、一気通貫の付加価値の高いサービスが提供できると考えた。また鉄スクラップの発生量が減る中、解体事業の拡大によりスクラップを自ら生み出していきたいという狙いもある」
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――現在の体制などは。
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「今年7月には不動産業界の出身者が1人入社し、当社の宅建士の資格保有者は現在2人。今は社員数人も資格取得に向けて勉強に励んでくれている。昨年からは建物解体時の有資格者によるアスベスト事前調査が義務化されたが、こちらもすでに20人が調査資格を取得している。また、もともと拡大したいと思っていた解体事業についても、コンサルの支援も受けながら改めて解体案件へのアプローチ方法などを学んでいるところだ」
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――今後の展望を。
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「まずは年度内に不動産事業での実績をつくりたい。地方では空き家となった住宅、使われていない工場も多く、アスベスト調査の義務化などで解体に着手できていない案件もあるとみられる。当社が一気通貫で引き受けることで、最初から最後まで相談者と向かい合うことができ、コスト面でも有利になると考える。当面は各事業部で協力しながら取り組んでいくが、次の段階では独立した組織も設けたいと思っている」
「環境資源事業部と生活環境事業部は重複している取引先もある。来年10月には基幹システムを更新するため、DXを活用したさらなる情報共有も図っていきたい。また解体時に多くの瓦礫が発生するため、総合リサイクル企業として新たな処理事業の展開も考える。12月からリプレースに取り掛かる東広島リサイクルセンター(東広島市)に、瓦礫・混合廃棄物の処理ラインを新設することを検討中だ。鉄スクラップ業者が処分で困っているギロチンダスト(加工時に発生する混合廃棄物)の処理と両にらみしている」
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――構内作業を請け負う日本製鉄瀬戸内製鉄所呉地区の設備休止を受け、近年は新規事業の開拓に取り組んでいる。
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「大前提として、私は『従業員の幸せを実現する』というビジョンを掲げる。休止の話が出てからは、構内作業に従事する製鉄事業部(現環境資源事業部)の従業員の雇用を守ろうと配置転換なども検討したが、従業員の多くは地元呉で働きたいという思いが強く、なんとか呉地区周辺で新たな仕事を生み出したいと動いてきた。20年の村上工務店のグループ化、22年に始めた太陽光パネルのリサイクルなどもその一環だ」
「従業員の協力もあって社内では新規ビジネスアイデアコンテストを開催し、今も新規事業の計画は複数ある。『人に心地よい環境をつくり、資源を持続的に生かし、地域と共に成長する』という企業理念に則り、既存事業との関連性が薄い事業でも挑戦していきたいと思っている」
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――より高いシナジー効果を発揮するため、横のつながり強化に向けた活動も活性化している。
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「これまでは部署を超えた交流機会が少なく、こっこーグループ全体でシナジーを発揮しきれていなかったという現実があり、長年の課題でもあった。さまざまな事業を手掛ける当社のリソースを最大限に活用すれば、こっこーにしかできないことも多くあるはずだ」
「サークル活動に補助金を支給する制度を設けたことで、ここ2年でキャンプ、ゴルフ、釣り、グルメ、ツーリングといったさまざまなサークルが増えた。プロジェクトメンバー11人で広報面の強化も取り組んでおり、今後は社内報なども一新していく。さまざまな活動を通じ、他部署への相談も気軽にできるようになったという従業員の声も聞く」
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――24年度からは『シン・こっこー』をテーマとする3カ年の中期経営計画を策定した。
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「事業の『進』化、『信』頼の獲得、『新』事業の創造、価値の『伸』長、『心』身の充実の5つを掲げ、『真』の価値を創造していく。設備投資や新規事業開拓を通じ、企業のブランド力、付加価値の向上に取り組む。企業だけでなく、スキルアップなど従業員一人一人のブランディングも支援していきたい」
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【2024.12.06】産業新聞 掲載
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