昨年7月に発生した西日本豪雨の影響で広島県呉地区は土砂災害や床上浸水で多大な被害を受けた。インフラ面では広島方面からの陸路・鉄路が寸断し大渋滞が起こり、呉地区への鋼材や加工製品の出入りが困難な状況が発生。市内を中心とした断水に伴い、市民生活・経済活動にも長期間の影響が表れ、不便な生活を強いられた。被災地・呉市に本社を置く総合リサイクル企業・こっこーは自社の従業員が被災する中、災害発生直後から災害廃棄物の処理に取り組んでおり、槙岡達也社長に聞いた。
—当時の被災状況は。
「まずもって、被災された方にお見舞い申し上げると共に、一日も早い復興をお祈り申し上げたい。当社従業員においても、約10名程が家屋の床上浸水や土砂災害などの被害を受けた。物流が滞り仕事にならないため、被災を免れた社員は自発的に被災した社員の家に向かい、土砂のかき出しや片付けを手伝っていた。作業で真っ黒になりながら高いに励まし合う姿を見て、この社員達がいれば、間違いなく会社は伸びるとの自信を持たせてくれた」
—会社の被害は。
「会社は7月単体で売上高は20%減。1週間程度の断水は発生したものの、特段に設備の浸水被害などはなく持ち直したが、私自身の計画性のなさを反省。有事の際に売上や今期業績の心配事が頭をよぎって右往左往していたのが実情だ。当社では被災当時を振り返りながら、何が起きて何が必要かを精査し、管理本部が中心となってBCP対策に取り組んでいきたい」
—災害廃棄物への取り組みは。
「豪雨災害発生当初から呉市の要請を受けて、広島県資源循環協会会員として呉市の災害廃棄物の仮置き場でのボランティアを地元復興の一環として開始した。その後は受入れ管理業務として業務受託した。当初は廃棄物受け入れと手選別のみだったが、今年1月からは、入札により処理業務全般に取り組んでいる。市からは想定数量約13万㌧分の災害廃棄物処理を受託しており、今年12月末までの期間での処理完遂に努めている」
—現場の状況は。
「夏場に丸一日、手選別の現場に入ったが、とにかく大変な作業だった。悪臭が漂う中、かがみっぱなしの作業。中身が入ったまま回収された冷蔵庫などの影響もあり、大量発生したハエが休憩所まで入ってくる。濡れた畳は腐ってひどい臭いを放ち、運搬にも力がいる。運び込まれた様々な災害ごみを見ると、生活用品はもちろんのこと、思い出の写真など、そこに被災者の方々の幸せな生活があったことが容易に想像でき、大変心苦しい気持ちになった。劣悪な環境下で現場作業に従事する社員には感謝しかない。当初は新たに積まれていく廃棄物の山を見て絶対に作業が終わらないのではと、左記が見えない絶望感にさいなまれたが、今年1月に現場に破砕機を導入したことで作業スピードも向上している」
—今回の教訓を生かすとすれば。
「今までこのような経験はなかったが、災害廃棄物処理に携わることで現場の勉強にもなった。当社では今後、廃プラや雑品などリサイクル分野の品目を増やすことを検討しており、今回の選別などの経験をプラスに生かしていきたい」
[2019.07.05] 鉄鋼新聞 掲載